2009/01/26

PCパワーはもう十分…?


netbook by -eko-

クリステンセンの“イノベーションのジレンマ”絡み…ローエンド破壊型イノベーションのことをまたしても書く。「常識じゃないか!」という方は笑ってスルーして欲しい。

Economistの記事「Less is Moore」があるところで紹介されていたので読んだ。今までパソコンの世界は「同じ値段でもっと機能や能力がアップ」することが望まれていたのだけど、今は「同じ機能・能力でこれまでより低価格」の方に関心がシフトしてしまっている…という現状を解説している。

PCは安価なネットブックでOKだし、ソフトウエアはSalesForceなどのネットでよくなって来ているという事だとか。

※ちなみにタイトルのLess is “Moore”は「ムーアの法則」のムーアさんと、Less is moreって言い回しをかけているってことね。


“イノベーションのジレンマ”で描かれた、ローエンド破壊の概念図

このネットブックとクラウドの2つは、どう頑張ってもこれからのトレンド…もうそんなに立派なPCを持つ時代じゃない…そしてこれらは典型的な「イノベーションのジレンマ」のローエンド破壊だなぁ…という話を以前にも書かせてもらった

イノベーションには従来製品の改良を進める持続的イノベーションと、従来製品の価値を破壊するかもしれない全く新しい価値を生み出す破壊的イノベーションがあるが、優良企業は持続的イノベーションのプロセスで自社の事業を成り立たせており、破壊的イノベーションを軽視する。

優良企業の持続的イノベーションの成果はある段階で顧客のニーズを超えてしまい、顧客はそれ以降においてそうした成果以外の側面に目を向け始め、破壊的イノベーションの存在感が無視できない力を持つようになる。

他社の破壊的イノベーションの価値が市場で広く認められた結果、優良企業の提供してきた従来製品の価値は毀損してしまい、優良企業は自社の地位を失ってしまう。

以上はWikipediaからの引用。まさに、今現在進行中の最新事例。そしてネットブックに対して微妙な立場を取る国内などの有名メーカーのジレンマ、例えば最近話題のVAIO Type-Pが“ネットブック的”企画意図が見え隠れしながら、AV機能などの微妙な機能を追加してどこか吹っ切れていないのも、市場の価値基準を変えるネットブックにコミットしてはマズい…などいろいろと思うところがあるからなのかも?と勘ぐってみる。

でもそこで(利益率が低いなどの理由で)逃げちゃうと、イノベーションのジレンマ - ローエンド破壊で、いずれ撤退…もしくはニッチ市場で細々と生きる、という憂き目になるような気がするのだけど。なかなか舵取りは難しいんだろうな。

そういえば、Mac、そしてAppleも同じように既存優良企業側の立ち位置。個人的にAppleはMacにおいては機能、速度以外の使う上での快感という別のベクトルをどんどん持ち込む事で市場ニーズをもっと上に持ってこようと努力している印象。そして全然別の、まだニーズよりも遥か下の能力しか無いスマートフォンにiPhoneで参入したことで、まだ飽和しない別の市場にうまく軸足を移せたと正直感心する。

とは言えスマートフォン分野もPalm Preなど新たな敵がゾクゾクと出てくる新興市場…これからどんどん激しいバトルが始まっていくんだね。外野で見ている分には面白いんだよね。